梅田望夫さんのインタビューにゆっくり反応してみる(3)-1

前回。
ユーザは好きだったweb文化を梅田さんにけなされたように感じたから、あれだけの感情的反発が巻き起こったのではないか。そして、その反発は顔を出しやすい、梅田さん個人への批判と対外コンプレックスの発露に向かったんじゃないか、という話。
それと。
それでも、日本のwebのサブカル文化は、英語圏とは違うやり方で、可能性を発揮しつつあるよ、それを梅田さんは見落としているのでは、という話。
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その続き。
日本のWebは「残念」 梅田望夫さんに聞く(前編) (1/3) - ITmedia NEWS
Web、はてな、将棋への思い 梅田望夫さんに聞く(後編) (1/3) - ITmedia NEWS
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/
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今回はwebと知性について。日本のweb空間には知性が足りない? 知的に一流の人材が参加してこない日本のwebは残念?という話。
個人的には、梅田さん本人のインタビューよりも、梅田さんの立場を代弁した海部美知さんの記事の方に感情的な反発を感じたなー。

梅田氏と「アテネの学堂」 - michikaifu’s diary

しかし、本当のところは、そういった大きな仕組みの中で、「チープに手軽に、地理的制約もなく、自らの考えを公表したり議論したりすることができる」という特徴を使って、知的な議論が交わされ、シリコンバレーでよく使われる用語を使って大げさに言えば「世界をよりよくするため(to make the world a better place)の知識」が形成され、それが多くの人の手によって実行に移されていくことが「すごいこと」なんだと思う。

webを使って意見を交換し合い、そのことによって、世界をよりよい場所にしていく、というのは、超一流の知性を持つ人たちだけの仕事じゃないよ、むしろ、その仕事を担うのは、普通の人たちだよ、とそう思う。
アテネの学堂はそれこそ、webのどこかにあってもいいでしょう。でも、webを使って、知的な議論を交わしながら、実際に、世の中を変えていく仕事の主役は、普通の人たちでしょ、とそう強く思う。
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梅田さんもここのところを誤解しているように見える。たとえば、インタビューの次のところ。

ウェブ進化論の中では「総表現社会」という言葉を使っている。高校の50人クラスに2人や3人、ものすごく優れた人がいるよね。そういう人がWebを通じて表に出てくれば、知がいろんなところで共有できるよね、というところまでは書いている。

50人の中の、二人か三人をネット上の議論に引き出してどうするの、と思う。そんな上澄みだけネットに引き出してもどうしようもないでしょ、と。
やはり、梅田さんの言う正規分布のいちばんボリュームのあるゾーン、普通の人たちをネットに引き出して、さらにちゃんと議論が成り立つ仕組みを考えなければいけない。どうしても陥りやすい、ネガコメや個人攻撃の落とし穴にはまりにくいような、議論の仕組みを。
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いや、普通の人たちに、「知の増幅器」たるネットを使って、意見を交換し合い、合意を形成して、世の中を変えていく。そんなことが普通の人たちにできるの?と疑問に思う人がいるかもしれない。
たとえば、今、日本社会の抱えている問題として、医療やお医者さんの問題がある。医療関係のニュースを追ったり、お医者さんのやっているブログを読めば、近い将来、お医者さんが足りなくなって、ものすごい苦労を強いられる人がたくさん出るぞ、というのは誰でも分かる。
それこそ、道を歩いていたら、穴ぼこがあって、そこは避けて通りましょうね、ぐらいの明瞭な話。
それなのに、この簡単な話が、従来のメディアを通じてでは、うまく人々の間に浸透しない。
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自分がwebに望むのは、こういう問題を、webを通して、多くの人に知ってもらって、大ざっぱでいいから認識を共有したい、ということ。こういう、分かっている人には簡単な話なのだけど、コミュニケーションが行き渡らなくて、意見がまとまらない。その結果、現実をずるずると引きずってしまうという事態が無数にある。
日本のwebにおいて、いちばん必要とされる知性というのは、アテネの学堂の知性ではない。日本のwebに必要なのは、普通の人がもっている知見を交換しあって、穏当に、お互いの認識の共有部分を深められる場所と、そういう場所に登場する、普通の人の知性だと思う。
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(3)-2へ続く。