石油最後の1バレル、感想

石油 最後の1バレル

石油 最後の1バレル


この本の著者の主張は、石油が枯渇してしまいますよ、という脅しではなく、「使い勝手のよい軽質スイートの原油がいずれ足りなくなり、そのため価格が高騰し、その結果、石油はほかのエネルギーによって取って代わられるでしょう」ということだと思う。そして、その変化にはかなり時間がかかり、大きな社会的な変化を引き起こすでしょう、と。
「軽質スイート」というのは、流動しやすく、硫黄分を含まない原油のことだそうだ。WTI原油先物や、北海ブレントなど代表的な先物指標で取引されるのは、全部このタイプの原油
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この本の後書きを著者が書いたのは、2005年の夏の終わり頃のことだそうだ。そのころの原油先物の価格は1バレル65ドル程度。現在、直近では138ドル程度まで上がっている。
参考までに原油先物のチャート。原油(WTI期近先物)(月足を見ると、原油先物の変化がわかりやすいと思います)。
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2005年の夏の時点から今を振り返ると、ほぼ作者の見通しどおり、と言っていいと思う。2008年6月の時点で自分が読んだ限りは、主張も内容も古びてはいない、と感じた。
3年先まで通用する予測を立てられる、というのはなかなかすごい。
現実の世界の進展は、この本の作者が予測していたのよりも早く石油の価格が上がり、そのわりに社会の変化が遅れ気味、しかし天と地がひっくり返るほどの大騒ぎにはなっていない、という感じか。