wikileaksはパキスタンにおけるサウジアラビアの役割を明らかにする

WikiLeaks Reveals Saudi Arabia's Role in Pakistani Affairs - TIME
Time誌の記事から部分訳。地味だけどおもしろい記事。
えっ、サウジアラビアってこんなことしていたの?と。パキスタンサウジアラビアの緊密な同盟関係。
イスラム過激派が跋扈している現状って、けっこうサウジアラビアの責任が大きいんじゃない、とか。パキスタン核兵器を持てたのって、裏でサウジアラビアアメリカを説得したからじゃない?とか憶測がすすむ。
以下に本文。


CIAの無人飛行機がぶんぶんとWaziristanの山脈の上を飛んで、何十億ものアメリカドルがイスラマバードの政府に資金援助をしているので、パキスタン政府がアメリカ政府による介入の心配ばかりするのは無理もないこと。
しかしWikiLeaksによってもたらされたUSの外交公電の宝の山からは、US以外の鍵となる外国の策謀が目にとまるようになる。おそらくはアメリカよりももっと影響力が強い、サウジアラビアだ。
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先週明らかにされた文書は、パキスタンとその長年のアラブの同盟国の緊張をはらんだ結びつきを語っていた。
2009年1月の公電によると、サウジアラビアのAbdullah国王はパキスタンのZardari大統領のことを、「身体をダメにしてしまう腐った頭」と表現。他の公電によるとサウジは、軟弱な文民政権がリーダーシップを失って、軍隊の強力な統治に取って代わられることを望んでいるとのこと。
サウジアラビアはZia ul-Haq将軍による軍事政権の主要な支援者だった。軍事政権は、1977年に政権を握り、イスラム化運動をパキスタンに広げたのだ。またその軍事政権は、主要なUSの同盟国でもあった。
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US外交官の心配は、サウジアラビアパキスタン政府へのdimな(ぼんやりとした?冷淡な?)見方だけではない。
2009年12月の、Hillary Clintonの署名のある秘密電報によると、サウジアラビアは「テロリストの資金繰りの決定的に重要な源」である。
そして、サウジアラビアは、パキスタンに直接的な関係をもっている。なぜならば、パキスタン内の聖戦主義者の組織の資金的な後押しをしているといわれていて、それらの組織はサウジアラビアで結成され続けているからだ。海外のスンニ派民兵グループへの私的な献金を断ち切ろうとする、サウジアラビア政府の努力にもかかわらず。
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サウジは、パキスタンの問題で重要な役割を果たすことにずっと慣れっこだった。
2007年の公電には、サウジの外交官よる、US外交官Adel al-Jubeir(彼はAbdullah国王の親密な側近だと言われている)への自慢話がのっている。
「われわれサウジアラビアは、パキスタンにおいてオブザーバーではなく、むしろ直接の参加者である」。
二国は、自然な、いつまでも続く絆を共有している。つまり、サウジアラビアは、イスラムの正統で、王国であり、またイスラムの聖地の保護者でもある。一方、パキスタンイスラム教国として建設された。
何年にもわたってサウジアラビア政府は、何十億ドルものオイルマネーパキスタンに投資してきた。何百万人ものパキスタン人が現在、サウジアラビア国内に住み、働いていている。彼からの海外送金は、パキスタンにとって主要な収入の元でもある。
イスラマバードのFaisalモスクは、国内で最大のモスクだが、それは、サウジの国王の名前がついている。「パキスタンは、サウジアラビアにとっていちばん重要なイスラムの同盟国だ」。中東とサウジアラビアの戦略を助言するVizier Consultingに所属していて、Pakistan Policy Blogのエディタでもある、Arif Rafiqはそう言う。
サウジアラビアは、パキスタンのことを、影響を与え、そのパワーを投影するための目標母集団(target population)だと見ている。
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アナリストは、サウジの支援によって建てられる、保守的なmadrasah(イスラムの宗教学校)がパキスタンの国中に広がるのを見てきた。madrasahは、純粋主義で不寛容なスンニ派イスラム教の一派が拡散するのを助け、そして、パキスタンに災厄をもたらしている民兵を養成することになった。
リークされたUSの公電によるとそれだけではない。パキスタン国土で活動している過激派グループ、al-Qaeda、Taliban、Lashkar-e-Taibaなどは、毎年、サウジアラビアで何百万ドルも金を儲けている。
2009年8月の公電は、サウジに拠点を置く、Lashkar-e-Taibaのフロント企業の名前を指摘している。その会社を使って、Lashkar-e-Taibaは資金を貯め、お金を動かしているようだ。
米国政府は、サウジ政府に、サウジ国内からのテロリストへの資金援助の源を絶つように、強く要請してきた。--リークされた公電によると、その方向で準備は進んでいるようだ--
しかし、サウジアラビア政府には、資金を完全に絶つための手段をもっていない。
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民兵との紛争状態を抜け出そうというパキスタンの苦闘は、サウジ政府のZardari大統領への冷たい意見を変えることはない。
大統領の有力な政治的ライバルで、そしてより宗教的に保守的なNawaz Sharifは、追放中の8年間を国王の客人としてサウジで過ごした。
公電は、サウジが繰り返し、Zardari大統領の汚職と無能力について不信を述べていることを明らかにしている。
しかし、それは、有名なサウジの側の宗派的な偏見を示唆するものでもある。サウジアラビアは、Zardariがシーア派に属していて、それゆえに、イランと友好的である、と感じているのだ。
イランはサウジアラビアの宿敵である。
2008年のZardariの当選からすぐのUS公電によると、パキスタンの外交官は、カウンターパートのUS外交官に、当選以来、サウジの資金的な援助がはっきりと減った、と不満を述べている。
当局のある人によると、サウジ政府は、ただZardari政権が失墜するのを待っているだけ、とのこと。
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Riyadhのサウジ政府は、パキスタンの現在の軍の最高司令官、Ashfaq Kayani将軍にもっとも大きな希望を見いだすかもしれない。
2009年のHolbrookeとサウジの大臣との会話によると、大臣はKayaniを優秀(decent)な男と褒め称え、そしてパキスタン軍部--軍はパキスタンを長い期間にわたって支配していた--は、この国にとってのwinning horseだとサウジは見ていると述べた。
それは驚くべきことではない。1970年代と80年代に、15000人のパキスタン兵は、サウジの砂漠に駐留し、王国の国境を守っていたのだ。
そして、それ以降も、サウジアラビアは、かなりの資金的、技術的な援助をパキスタン軍に対して行っていた。
Zardari政府との緊迫はあっても、軍と情報部のRiyadhへの結びつきは強固である。
そのため、USは、この地域へのプレゼンスは大きくてもまだ、サウジアラビアに相談と助言をあおいでいる。
公電によると、Arif Rafiqはこう言ったそうだ。「サウジのパキスタンにおける深い既得権とパキスタンへの影響力の大きさのために、USでさえ、この国についてのサウジの知恵を借りなければならない」。
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Columbia's School of International and Public Affairsにおける、南アジア研究の教授である、Hassan Abbasが指摘したように、公電はまた、この地域における、USとサウジの利害がどこで分かれるかも明らかにしている。「サウジアラビアは王政で、多くのイスラム教国が民主化の道を歩むことに関心がない。」
2009年四月の公電は、サウジが、シーア派のトライアングル、シーア派に率いられた、敵対的な政府--イランとイラクパキスタンのこと--を恐れていることを明らかにしている。
イランにパキスタン。一方で、サウジはもう一つの勃興する民主主義のイスラム教国、トルコの強い影響力に、対抗しようと必死である、と指摘する人もいる。
それらの国々の違いがどのようなものであれ、WikiLeaksの公電は米政府の考えを明らかにした。パキスタンの救済の道がいかなるものであれ、それはサウジ政府の意向に沿って曲がりくねった道になるだろうと。