南の島の歴史

南島論序説 (講談社学術文庫)

南島論序説 (講談社学術文庫)

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実は、ついこのあいだ、屋久島へ行ってきた。
大人になってからは初めて体験する南の島で、そのなんともいえない緩やかさにすごく心が惹きつけられて帰ってきた。
帰ってきてからもその印象がなかなか去らず、南の島について書いた本でも読んでみると、おもしろいかもしれない、と思った。
この「南島論序説」を手にとってのは、そういうわけで、南国の古い民俗や、昔ながらの生活習慣、共同体の仕組み、そんなものの説明を期待して読んだ。
ところが、予想とは正反対にというか、本の内容のほとんどは先島諸島に科せられた、過酷な人頭税の話だった。
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この人頭税の話を上っ面しか知らなかったけれど、この本を読む限りは、現世の地獄を生きるような話だ。
近世から近代のはじめにかけて、日本に奴隷制があった、と言ってもいいように思った。
平民に生まれれば、土地に縛り付けられて(あるいは命令によって強制移住させられて)、生産するものの90%を収奪されて、50歳にもなれば過酷な労働によって体を壊してしまう。
そこから逃れるには、士族の妾になるか、もしくは子飼いの奴隷的存在、名子になるしかない。などなど。
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こういうふうに言ってしまうには、歴史はあまりにも複雑なんだろうけど、同じ日本の歴史とは思えないくらいひどい。
薩摩藩に支配された琉球王国が、薩摩藩の過酷な収奪を逃れるために、今度は先島の諸島を支配する、という構造らしい。
こういうふうに、南方の島を過酷に支配して上げた収益が、回り回って明治維新を可能にしたのかと思うと。
何というか言葉も出ない。