はてなマガジン(仮)計画 uyh(5)

棋聖戦第一局の観戦記を書きに行ってきます。 - My Life Between Silicon Valley and Japan
どうやって、日本のweb空間に知的な議論ができる場所を作り上げるか、一つの案。
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はてなは世論形成場所、もしくは世論形成場のためのハブになったらいいと思う。
どういうことか。
新聞や、テレビの報道番組や、総合雑誌や、リベラルや保守の人たちが出している雑誌、そういったものが担っている世論形成の役割をはてなも担えばいい。
もちろん、はてな自らが思想雑誌を作るのではなくて、ユーザがそういうさまざまな雑誌を作るのをお手伝いする、ということ。
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新聞や雑誌は、継続的に発行されて、何か新しい事件や現象が起きるたびに、それぞれの政治信条に合わせて、その都度の見解を社会に向けて発信してきた。
その継続性と、ぶれのなさが評価されて、何か新しい出来事が起こったときでも、朝日新聞ならどう評価するだろう?保守雑誌の正論はこのことについて何を言うだろうか?みたいに、世論ウォッチャーに気にされてきた。
こういう伝統的な紙メディアが担ってきた、世論形成の先触れとなる役割、世論形成をリードする機能の一部をwebメディアももつべきだと思う。
右派も左派もいて、目の肥えた観客もたくさんいるはてなは、世論形成のハブとなる絶好のポジションにいる。
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はてなはそのための新サービス、はてなマガジン(仮)を作ったらよいと思う。まあこれは自分の妄想だけど。
具体的にはこんな感じ。
もちろんはてなの人が直接、マガジン作りに乗り出すわけではない。ユーザの中で、自分と同じ考えをもった人たちがグループを作る。左派の人たちは、左派の人で集まって、マガジンを立ち上げればいいし、経済系のブロガーがグループを組んで、経済問題に特化した雑誌を作ってもいい。
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マガジンの中身は、主に3つ。
特集記事として、お題を設定して、その表題の元にブロガーから記事を募る、書き下ろしの記事。
たとえば、今回の梅田さんのインタビューが発端になったインタビューであれば、「はたして日本語圏のwebは英語圏よりも残念なのか」とか、「日本語圏のwebに知的な専門家が少ないのはなぜ?」みたいなお題を設定してさまざまなブロガーから記事を募る。
従来の個々ばらばらに反応するやり方よりも、先にテーマを設定して、それに合わせてブロガーが書いてくるので、格段に反応が見やすいはず。
次。
普段から編集、更新される記事。マガジンを運営しているグループによる、共同編集のtumblrみたいなもの。そのマガジンの編集方針に沿って、重要な記事だなと思うものをtumblrのようにクリップして表示する欄。
ブログがこれだけ増えてくると、メタブログサービスがないと、どうしても全体を見渡せないところがある。ブログの記事のいいところだけを切り抜いて見せる、tumblrの考え方は画期的だし、こういう機能はまねするべきかと。
最後。
マガジンの読者と、マガジンを運営している人、いわば編集委員とが交流する掲示板。
はてなマガジン(仮)の目的は、ただの情報フィルタになるだけではなく、同じようなことを考えている人たちが集まるコミュニティに場所を提供することも目的の1つ。
マガジンが運営されて、掲示板でさまざまな人たちが交流したり、攻撃し合ったりしているうちに、なんとなくそのマガジンなりの共通見解やコンセンサスが生まれてくるはず。
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なんでそんな面倒な雑誌みたいなものを運営するのか? 今までのように、ブロガーが好きなところにいて、自分が思うように記事を書いていればいいじゃないか、そういうふうに感じる人もいると思う。
なぜはてなマガジン(仮)のような計画を思いついたのかと言えば、1つは単純で、これだけブログが増えてくると、メタブログサービスなしには、ブログの全体像を見渡すことが難しくなっているから。
今回の梅田さんのインタビューに対する反応でも、インタビューに対する直接の反応から、その反応からさらに派生したエントリ、さらにさらに、その先に派生したエントリ、というふうになって、非常に見にくくなっている。
また、その内容も、梅田さん個人についての話題があったり、日本語圏と英語圏のwebの違いに焦点を当てたものがあったり、webと知性の問題を取り上げたものがあったり、複雑多岐にわたる。これらが整理されないまま、あっちとこっちに飛び散ってあるので、なかなか探しづらい。
そういうものを整理してくれるブログサービスがあったらいいな、というのが1つの理由。
もう一つ。こちらの方が重要な理由。
正直なところ、webの世論が社会全体に及ぼす影響力というのは非常に弱い。皆無ではないにせよ、すごく弱い。
それはなぜかと言えば、影響力のあるブロガーのほとんどが一匹狼で、web全体の世論のあり方、というのが見えづらかったせいだと思う。
なんだかんだいって、コミュニティを作り、これだけの人が集まって議論した結果、出た結論がこれです、というふうにwebの世論を集約した形で社会に示せたら、それなりに影響力は強まるのではないか。
はてなマガジン(仮)という、コミュニティの形を取ることで、webにいるこのグループは、こういう考えをもっているんだぞ、ということを社会に強く印象づける。
それがマガジンという形式を取る最大の理由。
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正直なところ、日本で、今実際に権力を握っている人たち、あるいは、社会の世論形成に強い影響力を持っている旧来メディアの意志決定は混乱していると思う。
国営の漫画喫茶もそう、かんぽの宿騒動もそう。朝日新聞の社説を毎日読んでいるけれど、完全に、自民党の政府が右むきゃ、おいらは左、みたいな状態。景気対策に力を尽くせ、と言ったかと思えば、増税から逃げるな、と言ったり、この人たちはもう、自分たちの考えの整合性をとれなくなっているんじゃないかと、思うぐらい。
自分の場合、最近は、何か事件が起こったときでも、それについて、いちばん定見のある、納得のいく、深い意見はwebの中から見つかることがほとんど。しかし、webの中で、これはいい、この人の考えをもっと多くの人が知ってくれたら、世の中はよくなるかもしれない、と思っても、なかなかそこから先へは広がらない。
webの中の世論の、実社会に対する影響力を増すために、まずは、webの中で同じような考えをもつ人たちが集まり、マガジンを作って、ポータルを作って、webの中にはこういうふうに考えている人がこれだけいるぞ、ということを実社会に対して示す必要がある。そういうふうに自分は思う。
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「“上の人”が隠れて表に出てこない」一つの理由 - Baatarismの溜息通信

日本においてこのような「知的な議論」を行うだけの知見を有するのは、大学の研究者や文化人を除けば、政府、政党、官庁、企業、マスコミなどの組織において、議論の対象となる専門分野を仕事としている人となるでしょう。
(略)
しかし僕が見たところ、それらの組織は、所属している人がネットで仕事に関わる分野について主張することを、好ましく思わないことが多いです。
(略)
だから梅田氏が本当に行うべき事は、日本の組織が所属員のネットでの発言を禁止しない・自粛させないよう、それらの組織の経営者層に対して訴えることだと思うのです。

Baatarismさんはこう言われるけれど、自分はこれは順番が逆だと思う。
まず、はてなの中にきちんとした場所を作る。webの世論に大きな影響を与えることができ、何かことが起こったときに、きちんとそのことについての評価が下せ、ネット外の人からも一目置かれるような場所。明瞭な方針に基づいて、継続的に運営され、良質なコンテンツがあって、それなりたくさんの人が集まっているような場所。
そういう場所をきちんと作れたら、従来の紙メディアの専門雑誌、「世界」とか「諸君」みたいな、ぐらいの影響力は持てるだろうと思う。これは自分の希望だけど。
そうすれば、おそらく頼まなくても、向こうから、webを見ている人の世論形成に影響を与えるために、記事を書いてくれるのではないか。新聞に署名記事のコラムを寄稿するみたいに。
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以上。梅田さんのインタビューにゆっくり反応してみるシリーズ、終わり。