長続きしている、タイタンの湖は生命にとって吉報です

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Long-lived Titan lakes are boon to life | New Scientist
最初は、newscientistから。「長続きしている、タイタンの湖は生命にとって吉報です」と。


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なぜ、土星の衛星のタイタンの北極は湖ばかりなのに、南極は乾燥しているのでしょう?
季節的な変動ではなく、何千万年にわたる土星の軌道がその原因かもしれません。そのことは、土星のいるかもしれない生命にとって、進化するための長い時間が与えられている、ということです。


2004年に、土星探査機のカッシーニはタイタンにたくさんの炭化水素の湖を発見しました。しかし、それは、南極よりも北極の方にずっと多く見つかりました。
カッシーニの観察中、北極は、冬を経験しているところだったので、研究者たちは、湖は季節的な現象に過ぎないかもしれない、と考えました。冬にメタンの雨で満たされ、夏には蒸発してしまう、と。


しかし、カリフォルニア工科大学のOded Aharonson が主導する新しい研究によると、湖はもっと長続きしており、土星の軌道のゆっくりした変化によって、両極のあいだを移動している、とのことです。


奇妙なことに、乾燥した湖による地形も、南極よりも北極の方にずっと多い。もし、湖が単純に、タイタンの一年(地球の29.5年に当たります)にあわせて、両極を行ったり来たりしているならば、乾燥した湖の数も、両極で同じになるはずです。
季節的な変動による説明にとって、湖の深さも問題です。研究によると、タイタンの夏には、たった1メートルの液体が湖から蒸発するだけだそうです。湖の液体を完全に排出するのにぜんぜん足りませんし、200メートルの深さの湖地形を埋めるのにも足りません。


代わりに、研究者は、4500年サイクルで、湖は増えたり減ったりする、と主張します。このサイクルは、太陽の周りを巡る、土星の細長い楕円軌道--測定離心率--と、軌道に対する自転の傾き--歳差運動--によって決定されます。


現時点では、土星の軌道は完全な円形ではありません。軌道のあるときは、別の場合に比べてずっと太陽の近くに位置することになります。この惑星は、軌道に対して27度傾いてもいます。
惑星が太陽に最も近いとき、惑星の南極は太陽の方を向いています、したがってタイタンの南極も同じです。研究者の計算によると、タイタンの南極の空気は、夏の間、北極よりも24%も多い太陽の入射を受けます。


研究者は、このことが、両半球の、蒸発と降雨量の差に結びつき、両半球での湖の数の差を説明するかもしれない、と言っています。地球では、同じような軌道の変化が気候変動のペースメーカとして働いているようです。


もし、土星の軌道による説明が正しいとすれば、タイタンの北極に、いつも南極よりもたくさんの湖がある、というわけではないことになります。土星とその衛星は太陽の周りを回るうち、ゆっくりとぐらいついています。時には、タイタンの南極が、北極よりも、より短い強烈な夏を経験することもあるのです。


もし、タイタンの湖が数万年単位で、両極の間を移動しているならば、なぜ私たちは、両極で同じ数の乾燥した湖地形を観察しないのでしょう? Aharonsonが言うには、どろどろとしたマテリアルが、過去30000年にわたる南部の湖を隠してしまっている、とのことです。
タイタンの湖の分布は、タイタンの気候の歴史を調べるのに使えるかもしれない、という考えはすばらしい。ケルン大学のTetsuya Tokanoはそう言います。


そのアイデアはすぐにテストされることになります。8月には、ここ15年で初めて、土星の北極が太陽に照らされました。ということは、タイタンの北極も照らされています。「私たちは、うまくいけば、次の数年のカッシーニの観察で、数年のタイムスケールで、湖の分布が変わらないのかどうか、北極のどこに、いつ雨が降るのかを見ることができるでしょう」。そう、Tetsuya Tokanoは言います。


「タイタンの湖は非常に冷たいので、一般的に言えば、前生物学的反応、有機化学的反応も、地球における反応よりずっとゆっくり進むはずです」。「もし、湖が10年ごとに乾燥してしまうのならば、関連するいかなる化学的な進化にも短すぎる、ということになります。宇宙生物学的には、何万年単位で続く湖の方が望ましい」。