人類の足跡10万年史

人類の足跡10万年全史

人類の足跡10万年全史



読んだ。けっこう込みいった内容が多くて気楽に読める本ではなかったけれど。
母系にだけ遺伝するミトコンドリア遺伝子と、男系にだけ遺伝するY染色体遺伝子。これらの遺伝子の変異と、考古学的な証拠、そのころの気候と地形の様子、そういったものを組み合わせて、おそらく人類はこういうふうに各地に広がったのだろう、ということを推論する。
その推論自体がややこしいのと、そもそもいろんな集団があっちへ行ったりこっちへ行ったりするので、非常にややこしい。
まあその複雑さ、多岐さが人類の歴史そのものなんだと思う。
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おおざっぱに人類の歴史をまとめる。
この本によると、現生人類は8万5000年ほど前に、アメリカから出た。現在のエチオピアからアラビア半島の南端、イエメンのあたりに上陸して、海岸で食べ物を採集しながらユーラシア大陸を東に進んで、インドまでたどり着く。
著者によると、南インドのあたりこそが、アフリカを出た現生人類がしばらく足を止めた土地で、ここが第二の故郷みたいなものらしい。
人類は海岸沿いに移動したので、オーストラリアとニューギニアに入ったのは非常に古い。遺伝子の分岐を調べると、6万5000年ほど前にはオーストラリアに入っていて、同じ頃、別々にニューギニアにも人が入ったらしい。
こういう海岸採集民は日本にも来ていて、沖縄で見つかった港川人は古い時代の人類の特徴をよく残していると。また、港川人の特徴のいくつかはアイヌの人にも残っていて、やはりアイヌの人々は、アジアの中でもかなり古い、特徴的な遺伝子をもっていると。
日本列島について言うと、よく言われる、縄文人弥生人だけでなく、2万年前の最終最大氷期の頃に、アジア大陸、シベリアの当たりからマンモスを追っていた狩人の人たちが入っているらしい。そのころの時代から、それまでとはがらっと変わった狩りの道具、石器が発見されるようになるよう。
アメリカ大陸へは、最終最大氷期の前、2万2000年前から3万年前と。従来の説よりも、かなり古い時代から人類はアメリカに渡っている。
ヨーロッパと西アジアは、5万年前ぐらいからインドを経由して植民された。
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印象的なのは、けっこう人類は苦しんでいるなーということ。
7万4000年前に、スマトラのトバ火山が大噴火を起こした。過去200万年で群を抜く規模の大噴火だったらしい。当然、気候は寒冷化して、その頃、インド洋沿いにいた海岸採集民たちは絶滅してしまった。その遺伝的な証拠が今でも、インド大陸に残っているらしい。
2万年前の最終最大氷期もおそろしく、寒冷化と砂漠化のために、かなり多くの人たちがそれまで住んでいた土地を離れている。韓国の辺りや日本列島やヨーロッパのバスク地方は、そのさいに避難場所となったらしい。